E-10 (航空機)

E-10は、米ボーイング社とノースロップ・グラマンが計画したマルチセンサー指揮管制機 (MC2A; Multi-Sensor Command and Control Aircraft)。旧式化したE-3 セントリー、E-8 ジョイントスターズ、RC-135シリーズの代替として、2003年に開発が開始された。しかし、2007年に開発計画は中止された。

開発経緯

原型機ボーイング367-80を祖とするC-135/C-137シリーズは、派生型であるボーイング707旅客機を含め軍民双方に大量に使用された傑作機である。軍用機で最も生産された、KC-135以外にも、電子偵察機のEC-135、ボーイング707から改造された早期警戒管制機のE-3Cセントリー、E-8 Joint STARSなど多数の派生機が存在している。しかし、ボーイング367-80の初飛行は1954年のことであり、軍用型の生産も1991年に終了しているなど、老朽化やスペースの狭さなどの問題から、後継機種としてボーイング767-400ERを開発母体として、電子戦管制機の開発ベースとなるMC2Aが計画され、2003年にノースロップ・グラマン、ボーイング、レイセオンから成るMC2Aチームに、プレSDD(システム開発・実証)機開発のための2.15億ドルの契約が授与され開発が開始された。ところが2006年1月、国防予算縮小のあおりを受けて追加予算を確保できなくなり、2007年には2010年進空予定の実証機を製造するに留め、量産計画は中止されることになった[1]。後に、この実証機の計画も放棄され、機器搭載の予定だった機体は2009年バーレーンVIP機として売却されている[2]

その後

スケールド・コンポジッツ プロテウスに搭載してテスト中のMP-RTIPレーダー

開発中止後、E-10のために開発された各種技術はE-3、E-8及びRC-135を改良するために活かされることとなった。E-10自体の開発は中止されたものの、搭載するMP-RTIPレーダーは開発が続けられ、小型化したものがAN/ZPY-2としてグローバル・ホーク ブロック 40に搭載されたほか[3]、E-8へもAN/APY-7としての搭載が検討されていた[4]

機体

E-10は、主契約者をノースロップ・グラマン社とし、MP-RTIP (Multi-Platform Radar Technology Insertion Program、多重プラットフォーム・レーダー技術挿入プログラム) (en)と呼ばれる空地両用のアクティブフェーズドアレイレーダーを搭載する計画であった。MP-RTIPレーダーは、E-10の機体下部に設けたカヌー型レドームに納められ、空中移動目標表示機能 (Air Moving Target Indication, AMTI) 及び陸上移動目標表示機能 (Ground Moving Target Indication, GMTI) を持つ。捜索履域は、空域で509 km四方、地上で426 km四方の性能を持つ。また、スパイラル2ではMESAレーダーの派生型が背部上面に[5]、スパイラル3からはRC-135の機能を引き継ぐSIGINTセンサーが搭載されるはずであった[1]

派生型

E-10Aには、用途によって次のような派生機が計画されていた。いずれも量産はされないことになった。

スパイラル 1
E-8 Joint STARS後継機。制式化されればE-10Aとなる予定であった。
スパイラル 2
E-3Cセントリー後継機。制式化されればE-10Bとなる予定であった。
スパイラル 3
EC-135(en)やRC-135などSIGINT任務機の後継機。制式化されればE-10Cとなる予定であった。

仕様

出典:「軍事研究」2007年5月号p.141

  • 乗員: 27名(操縦員 2名、機器操作要員 25名)
  • 全長: 61.4 m
  • 翼幅: 51.9 m
  • 全高: 16.9 m
  • 最大離陸重量: 20,4120 kg
  • 巡航速度: 930 km/h
  • 航続時間: 11.5時間
  • 実用上昇限度: 11,580 m

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 「軍事研究」2007年5月号 p.142
  2. ^ Sarsfield, Kate. "Bahrain acquires 767-400ER testbed for VIP use". Flight International, 27 January 2009.
  3. ^ AN/ZPY-2
  4. ^ Multi-Platform Radar Technology Insertion Program
  5. ^ Boeing 767-400 E-10A


命名法改正以前
- 1962
早期警戒機(W / 海軍)
  • WF
  • W2F
  • XWU(英語版)
  • WV
電子妨害機(E / 空軍)
  • EF-111
命名法改正後
1962 -
E
EA
EC
  • EC-130
  • 攻撃機
  • 爆撃機
  • 輸送機
  • 電子戦機
  • 戦闘機
  • グライダー
  • ヘリコプター
  • 観測機
  • 対潜哨戒機
  • 無人機
  • 偵察機
  • 練習機
  • 汎用機
  • V/STOL
  • Xプレーン
  • 飛行船
ボーイング社の軍用輸送・支援用航空機
輸送機
レシプロ
ジェット
給油機
レシプロ機
  • KB-29
  • KB-50
  • KC-97(一部の機がジェットエンジンに換装)
ジェット機
  • KC-135
  • KC-137
  • KC-10
  • KC-767
  • KC-46
練習機
レシプロ機
ジェット機
  • T-43
  • T-45
管制機
  • EC-135(英語版)
  • EC-18
  • E-3
  • E-4
  • E-6
  • E-8
  • E-10
  • E-767
  • E-7
偵察機
  • NC-135(英語版)
  • OC-135B(英語版)
  • RC-135
  • WC-135
哨戒機
  • P-8
実験機
UAV