マニクアガン湖

マニクアガン湖
所在地 カナダの旗 カナダケベック州コート・ノール地域マニクアガン郡ウタルド川地区/カニアピスコ郡ムシャラガヌ地区
位置 北緯51度23分 西経68度42分 / 北緯51.383度 西経68.700度 / 51.383; -68.700座標: 北緯51度23分 西経68度42分 / 北緯51.383度 西経68.700度 / 51.383; -68.700
流出河川 マニクアガン川(フランス語版、英語版)
集水域面積 29,241 km2 (11,290 sq mi)
面積 1,942 km2
周囲長 1,322 km
最大水深 350 m
平均水深 85 m
貯水量 139.8[1] km3
滞留時間 8年
水面の標高 342-359(1980年-2005年) m
プロジェクト 地形
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マニクアガン湖フランス語: réservoir Manicouagan / lac Manicouagan)はカナダケベック州中部にある、面積1,942km2ダム湖である。ルネ・ルヴァスール島とその最高点バベル山を取り囲む輪の形をしている。この地形は約2億1400万年前に地球に衝突した直径5kmの隕石により形成されたと考えられている。湖と中心の島は宇宙からもはっきりと見ることができ、「ケベックの目」とも呼ばれる。湖容積は35.2km3[1][2]

地理

カナダケベック州コート・ノール地域マニクアガン郡の中心都市ベ・コモの北約300kmに位置する。ただし最北部はカニアピスコ郡に含まれる。ケベック州道389号線が東岸を走る。

クレーターは直径100kmほどの多重リング構造をしており、うちダム湖は直径70kmに及ぶ。湖もリング状になっているのが特徴的で、輪の内側を占める台地の島がルネ・ルヴァスール島である。島の最高峰はバベル山で高さは海抜952m、湖水面からの比高で590mである。島の中央部はルイ・バベル自然保護区(フランス語版)となっている。

マニクアガン湖から南のサン=ローラン川まで至る広大な地域は「マニクアガン・ウアピシュカ生態系保護区(英語版、フランス語版)」をなし、一帯にはクレーター、氷河地形および太古の海底地形があり、塩性湿地森林および水域にはトナカイピューマイイズナコミミズクイヌワシクズリシロイルカなどが生息している。2007年にユネスコ生物圏保護区に指定された[3]

マニクアガン・クレーター

詳細は「マニクアガン・クレーター」を参照
スペースシャトルから見た冬季のクレーター(右下が北)

マニクアガン湖は古い浸食されたインパクトクレーター跡の中にある。クレーターを作ったのは直径5kmの小惑星の衝突で、当初は100kmほどのクレーターを形成したが、浸食と堆積のため現在見られる部分は直径約72kmに縮小している。縁から縁までの直径基準で、確認されている中では地球で6番目に大きなインパクトクレーターである[4]。バベル山はクレーターの中央丘が衝突後のアイソスタシーで隆起したものと考えられる。

このクレーターは知られているインパクトクレーターの中でも最古級で、研究によれば衝突年代は214±1Ma前(1Maは100万年)である。これは三畳紀終焉の12±2Ma前であり、衝突が三畳紀末の大量絶滅をもたらしたわけではない[5][6]

連鎖クレーター説

マニクアガン・クレーターを形成した小惑星の衝突が、フランス・ロシュシュアールロシュシュアール・クレーター(フランス語版)マニトバ州セイント・マーティン・クレーター(英語版)ウクライナオボローニ・クレーター(ウクライナ語版)ノースダコタ州レッド・ウィング・クレーター(英語版)を作った小惑星連続落下の一つではないかという説がある。シカゴ大学地球物理学者デイヴィッド・ロウリー、ニューブランズウィック大学(英語版)のジョン・スプレイ、オープン大学のシモン・ケリーが、5つのクレーターが一本の線をなす様に分布していることを指摘し、1994年に詳細な観測が行われたシューメーカー・レヴィ第9彗星の木星への衝突[7]時と同様に小惑星または彗星が空中分解して次々と衝突したのではないかとしている[8]

水力発電

詳細は「ダニエル・ジョンソン・ダム」を参照
ダニエル・ジョンソン・ダム

マニクアガン湖が現在の姿になったのは1960年代で、ダニエル・ジョンソン・ダム(英語版、フランス語版)の建設に伴い、クレーター中央台地の西側にあったムシャラガン湖および東側にあったマニクアガン湖(旧)をつなげる形でダム湖が造られた。この工事は州営電力事業体のイドロ・ケベックによるマニクアガン川・ウタルド川流域の巨大水力発電プロジェクト、マニク・ウタルド計画(フランス語版)の一環であった。

湖は巨大な取水庭として働いており、下流のジャン・ルザージュ発電所(フランス語版)(マニク2)、ルネ・レヴェスク発電所(フランス語版)(マニク3)、ダニエル・ジョンソン・ダム発電所(マニク5)に給水している。冬のピーク時には州内の莫大な暖房需要に応えるためにタービンが常時フル稼働するので湖水面は概して低下する。夏にニューイングランド方面で熱波が到来した時にも、イドロ・ケベックがニューイングランドの地域共同送電網やその他の公共事業体に売電を行うため水面が下がる。

関連項目

  • 地球のインパクトクレーターのリスト(英語版)
  • 地球の未確認のインパクトクレーターのリスト(英語版)
  • オメオンガ(英語版)

脚注

  1. ^ a b イドロ・ケベック:Cinq principaux réservoirs d'Hydro-Québec
  2. ^ Briney, Amanda. “The World’s Top Ten Largest Reservoirs by Volume”. About.com. 2017年10月28日閲覧。
  3. ^ “Manicouagan Uapishka Biosphere Reserve, Canada” (英語). UNESCO (2018年10月). 2023年3月10日閲覧。
  4. ^ “Impact Structures listed by Diameter(昇順)”. PASSC. 2017年10月28日閲覧。
  5. ^ Hodych, J.P.; G.R.Dunning (1992). “Did the Manicouagan impact trigger end-of-Triassic mass extinction?”. Geology 20: 51.54. Bibcode: 1992Geo....20...51H. doi:10.1130/0091-7613(1992)020<0051:DTMITE>2.3.CO;2. 
  6. ^ Ramezani, J., S. A. Bowring, M. S. Pringle, F. D. Winslow, III, and E. T. Rasbury (2005). "The Manicouagan impact melt rock: a proposed standard for intercalibration of U-Pb and 40Ar/39Ar isotopic systems". 15th V.M. Goldsmidt Conference Abstract Volume, p. A321.
  7. ^ Steele, Diana (1998年3月19日). “Crater chain points to impact of fragmented comet”. University of Chicago Chronicle. http://chronicle.uchicago.edu/980319/craters.shtml 
  8. ^ Spray, J.G., Kelley, S.P. and Rowley, D.B. (1998). "Evidence for a late Triassic multiple impact event on Earth". Nature, v. 392, pp. 171-173. Abstract

外部リンク

  • Manicouagan at Earth Impact Database
  • Manicouagan Impact Structure at Crater Explorer
  • Rowley, David. “Paleogeographic Atlas Project: Pictures”. Paleogeographic Atlas Project. University of Chicago. 2007年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月28日閲覧。
  • NASA Astronomy Picture of the Day: Manicouagan Impact Crater on Earth (2000 December 13)