ガロ系

曖昧さ回避 この項目では、日本のオルタナティヴ・コミックについて説明しています。由来となった漫画雑誌については「ガロ (雑誌)」をご覧ください。

ガロ系(ガロけい)とは、かつて青林堂が刊行していた漫画雑誌『ガロ』に掲載されていたアングラな漫画作品、ないし、その作家である個性派の特殊漫画家[1]、またその作風を指す表現。日本におけるオルタナティヴ・コミックに相当する。

著名なガロ系作家

主な執筆陣と代表作

その他作家陣

「アックス (雑誌)#主な執筆陣」も参照

編集陣

特殊漫画の定義

「特殊漫画家」を自称している根本敬は「ガロ系」という用語が普及する以前に、自らの作風を説明するために「特殊漫画」という造語を作り出した[注 1]

この「特殊漫画」というジャンルについて漫画家の山野一は「あまりにも私的で特異な題材を前面に打ち出しているためにほとんどすべての日本国民から無視・黙殺・拒絶され、職業として成り立ち得ないまでにマイナーな漫画の一ジャンル」とも定義している[4]。また漫画家・タレントのみうらじゅんは「アクション」「ギャグ」「ファンタジー」「ホラー」「SF」「恋愛」「ヒューマンドラマ」など一般的な漫画とは一線を画した、どのジャンルにも属さないこのジャンルについて「世の中の漫画は『ガロ系』と『それ以外』の2つに大きく分けられます」と述べている。

原稿料ゼロ

『ガロ』は全国書店流通の商業誌でありながら、「作家性の尊重」という個性重視で非商業的な独自路線が災いし、部数の低迷と万年貧乏の経営難が続いた。そのため1971年以降は原稿料の支払が停止され、『ガロ』は事実上「原稿料ゼロ」の雑誌であった事でも知られる。それでも歴代の作家陣などの精神的・経済的支援と強い継続の声により、細々ながら刊行は続いた。この「原稿料ゼロ」の伝統は青林工藝舎の『アックス』にも引き継がれている。

『ガロ』を強く意識していた手塚治虫の『COM』は『ガロ』のように「原稿料ゼロ」という訳にはいかず、1971年末に廃刊する。後に手塚治虫は長井勝一との対談で「ガロと違う所は売上部数に関係なしといった超然とした態度がとれなかったところですね」と述べている[5]

『ガロ』の作品募集欄にも「原稿料は出ません。当社としてもたいへん心苦しく遺憾なことですが当分の間は無理と思います。この問題は皆様にとっても重要なことと思いますのでよく考えてから投稿して下さい。」とその旨については常に書き添えられていた。

関連雑誌

日本オルタナティヴ・コミック誌を以下に列挙する。

刊行中

休廃刊

特殊形態

  • 青林工藝舎 『放電横丁』※青林工藝舎の漫画誌『アックス』のweb版
  • リイド社トーチweb』(2014年創刊~)※web雑誌
  • セミ書房 『漫画雑誌架空』(2006年創刊~)※同人漫画誌[注 2]
  • ドグマ出版 『漫画少年ドグマ』※ミニコミ誌
  • まんだらけまんだらけボヘミア』(2022年創刊〜)※web雑誌

脚注

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注釈

  1. ^ 「特殊漫画」という名称は小中学校に置かれている「特殊学級」に由来する。
  2. ^ 高田馬場つげ義春研究会を主宰する西野空男が創刊した「エッジがききすぎて行き場を失くしてしまった迷子漫画」を掲載するミニコミ雑誌。インディーズの自主流通出版物であり、日本全国でも9店舗の書店でしか扱っていない。 特に休刊したわけではなかったが、ウィキペディアの本項にて、「廃刊雑誌」として紹介されていたのを目にした関係者が『架空』存続の危機を感じて奔走。2015年夏に3年ぶりの「復刊」を果たした。

出典

  1. ^ a b c d e f 幸 (1990年9月17日). “拡大続くマンガ界 最近人気があるのは… おなじみ「ちびまる子ちゃん」ほか”. 読売新聞・東京朝刊: p. 9  - ヨミダス歴史館にて閲覧
  2. ^ a b c d e f g h “ギャラリービブリオ・ミニ収蔵展「ガロ系の表現者たち」!”. NPO法人 国立市観光まちづくり協会 (2012年8月22日). 2015年4月14日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g 蕃茄山人 (2014年1月23日). “告知・収蔵展「“ガロ系”の表現者たち part3」”. 蕃茄山人. 2015年4月14日閲覧。
  4. ^ 『月刊漫画ガロ』1992年10月号「特殊漫画博覧会」p.52
  5. ^ COMIC BOX』1982年10月号、p.108-p.109

参考文献

  • 青林堂編『ガロの世界』1967年 - ガロ創刊以来、新聞・週刊誌・雑誌・同人誌に発表されたガロ、白土三平水木しげる関係の論文・記事を収録
  • 長井勝一『「ガロ」編集長 』1982年 筑摩書房 ISBN 4480021590
  • ふゅーじょんぷろだくとCOMIC BOX』1982年10月号(Vol.2)「特集/長井勝一『ガロ』編集長」
  • 青林堂編『木造モルタルの王国―ガロ20年史』1984年 ISBN 4792601320
  • マンガ黄金時代'60年代傑作集 文春文庫 ビジュアル版 ISBN 416811001X
  • ガロ史編纂委員会 『ガロ曼陀羅』1991年 TBSブリタニカ ISBN 4484912228
  • 青林堂『ガロ』1992年10月号「特集/特殊漫画博覧会」
  • 青林堂『ガロ』1993年9月号「特集/三流エロ雑誌の黄金時代」
  • 権藤晋『ガロを築いた人々―マンガ30年私史』1993年 ほるぷ出版 ISBN 4593534283
  • 朝日新聞社アサヒグラフ』1994年10月21日「ガロ風雲録―特集・漫画王国の30年の軌跡」
  • ふゅーじょんぷろだくと『COMIC BOX』1996年5月号(Vol.102)「特集/『ガロ』編集長 長井勝一氏のある日」
  • 『ガロ』元編集部責任編集『マンガの鬼』1997年 創出版(雑誌『アックス』創刊準備号)
  • 青林堂編『「ガロ」という時代』2014年 ISBN 9784792605001
  • 都市出版『東京人』2014年7月号「ガロとCOMの時代 1964-1971」
  • 南伸坊『私のイラストレーション史』2019年 亜紀書房 ISBN 4750515787
  • 白取千夏雄『全身編集者』2019年 おおかみ書房独立系出版社
    • 元『ガロ』副編集長による非メジャー漫画史と自伝。2021年に増補改訂版『「ガロ」に人生を捧げた男』(興陽館)として復刊。
  • 高野慎三『神保町「ガロ編集室」』2021年 ちくま書房 ISBN 9784480437167

関連項目

外部リンク

  • 青林工藝舎 ホームページ
  • 白土三平絵文学/月刊漫画ガロ
  • 長井勝一漫画美術館 公式ホームページ
  • 山中潤氏の語る『ガロ』/原田高夕己
  • 『ガロ』と日本のサブカルチャーを考える/白取千夏雄
  • GARO - ein alternatives Manga-Magazin
  • ガロ系人名・用語辞典
  • ガロ・クロニクル・ガロ登場作家リスト
  • 山田視覚芸術研究室 / 前衛芸術と現代美術のデータベース【アヴァンギャルド】ガロ「前衛的で実験的な漫画雑誌」
  • “私のイラストレーション史 南伸坊 長井さんはすごい人”. 南伸坊. 亜紀書房 (2017年7月31日). 2017年11月20日閲覧。
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